はじめに
いきなりですが、センター数学Aでよく出るこんな問題、解けますか?
[問] 三角形ABCがある。辺BC上にBD:DC=1:1となるような点Dをとり、辺CA上にCE:EA=2:3となるような点Eをとる。 線分AD、BEの交点をOとし、直線COと辺ABの交点をFとする。 このとき、CO:OFを求めよ。
答えは後程…
この手の問題は、チェバの定理、メネラウスの定理を完璧に覚えていれば、結構簡単に解けます。
しかしこれらの定理、なんとも美しくないといいますか、理解しがたいといいますか、覚えにくいんです。 中途半端に覚えていると、分子分母が逆になってしまったりと、ちょっとした記憶違いがあったりして、えらいことになります。
でも、この程度の問題であれば、チェバさんにもメネラウスさんにもお世話にならずに、ちょっとした計算で解けてしまうのです。 しかも、深く納得しながら解けるので、間違いもありません。 時間もかかりません→他の問題に時間を回せます。
これから、その技を伝授したいと思います。
新しいことを覚えるのは少々面倒かもしれませんが、難しいことは何一つない上に、とてもイメージしやすい内容なので、必ずマスターできます。 30分だけでいいので、真剣にお付き合いください。
余談ですが、この技は、私「べっち」が高校時代に独自に編み出した解法で、教科書、参考書などには載っていません。 実際この技を使って、チェバさんにもメネラウスさんにもお世話にならず、センター試験の模擬テスト(当時は数II)で満点を連発しました。
残念ながら本番は96点でしたが(涙)
なので、実用性は十分、威力莫大と考えています。
三角形の重心とは
三角形の重心は、中学の時に習いました。
三角形の頂点と、その対辺の中点を結ぶ3つの線は1点で交わり、その点は各中線を2:1に内分する。 頂点とその対辺の中点を結ぶ線のことを中線といい、この点のことを三角形の重心という。
下記図の通りですね。
重心とは重さの中心、つまり三角形のプレートの重心を支えれば、指一本でも、鉛筆の先でも、バランスを保てるということなのだろうと思われます。 どうしてその場所が重心なのか? これを考え、ちょっと応用すると、驚くほどいろんなことが見えてくるのです!
どうしてそこが重心か?
本当にそれでいいの?というのは抜きにして(笑)こう考えることができると思います。
三角形のプレートだと考えにくいので、粘土(頂点)と竹ひご(辺)で作った三角形を考えることにします。 ただし、条件がありまして、粘土はすべて同じ重さ(重さ=1とする)、竹ひごは重さがないものとします。 この3つの粘土の重さの中心が重心であります。
では、この3つの粘土の重さの中心はどこか? まずは、B、Cだけで考えます。
そうすると、BCの中点Dが、BとCの粘土の重さの中心ですね。 Dを支えれば、B、Cはつり合うわけです。 ちなみにこの点Dには、BとCの重さを足した、2の重さがかかっています。
さらに点Aも考えます。 3つの粘土の重さの中心は、Dにかかる重さと、Aの粘土の重さの中心と考えられます。
そうするとこの通り、ADを2:1に分ける点ですね。 ちなみにこの点には、AとBとCの重さを足した、3の重さがかかっています。 うーん、スッキリですね。
バランスを崩してみる
そうすると、意地悪な人は、粘土の重さをバラバラにしたらどうなるか? 試してみたくなるわけです。
粘土の重さをバラバラ…これが驚くべき発見へとつながるのです。 (大げさ)
重さがゆがんだ三角形
粘土の重さを1、2、3としてみました。
こんな感じですね。
では、この3つの粘土の重さの中心はどこか? まずは先ほどと同様に、B、Cだけで考えます。
そうすると、BCを3:2に分ける点Dが、BとCの粘土の重さの中心ですね。 Dを支えれば、B、Cはつり合うわけです。 ちなみにこの点Dには、BとCの重さを足した、5の重さがかかっています。
さらに点Aも考えます。 3つの粘土の重さの中心は、Dにかかる重さと、Aの粘土の重さの中心と考えられます。
そうするとこの通り、ADを5:1に分ける点ですね。 ちなみにこの点には、AとBとCの重さを足した、6の重さがかかっています。 ここまで、いかがですか?
別の求め方
「まずはB、Cだけで考えます。」
いやいや、まずはA、Cだけで考えたっていいじゃない?
そうすると、ACを3:1に分ける点Eが、AとCの粘土の重さの中心ですね。 Eを支えれば、A、Cはつり合うわけです。 ちなみにこの点Eには、AとCの重さを足した、4の重さがかかっています。
さらに点Bも考えます。 3つの粘土の重さの中心は、Eにかかる重さと、Bの粘土の重さの中心と考えられます。
そうするとこの通り、BEを4:2つまり2:1に分ける点ですね。 ちなみにこの点には、AとBとCの重さを足した、6の重さがかかっています。 あれ?
重ねてみる
2つの求め方で求めた重さの中心、これって同じ点になりますよね? ということで、2つの求め方を重ねてみます。
おーーー!
そういえば、初めにA、Bだけ考えても、同様に求められますよね。 その結果と粘土の絵を全部重ねてみます!
こ、これは…。 まさにチェバさんとメネラウスさんの功績ではないですか!
つまり、粘土の重ささえわかれば、チェバさんにもメネラウスさんにも世話にならずに、何でも来いというわけなんです。
ついでに
なんで?というのは抜きにして、ここまでわかってしまうのです。
さらに内側の三角形DEFのところの比も全部わかっちゃいますが、まあここまででいいでしょう。
証明できますが、ここでは省略!
例題を解いてみる
さて、ここまで習得した技を使って、冒頭の問題が解けるか確認してみましょう。
[問] 三角形ABCがある。辺BC上にBD:DC=1:1となるような点Dをとり、辺CA上にCE:EA=2:3となるような点Eをとる。 線分AD、BEの交点をOとし、直線COと辺ABの交点をFとする。 このとき、CO:OFを求めよ。
わかっている情報を図に書き込んでみます。
やるべきことは、三角形各頂点の粘土の重さを求めることなのです。 重要な部分なので、丁寧にやっていきます。 慣れれば、ちょちょいのちょいとできてしまいます。
まずは、辺BCだけに注目するとこうなります。 BとCの粘土の重さは1:1、同じ重さですね。
次に、辺CAだけに注目するとこうなります。 CとAの粘土の重さは3:2です。
では、これらを重ねてみます。
Cは、1と3になってしまいましたね。 1つの比にまとめたいので、Cを1, 3の最小公倍数である3にします。 するとAはそのまま2、Bは3倍の3になり、結果的にこうなります。
ここまでできれば、もう全部わかっちゃいます。
さらに、こんなこともわかっちゃいます。
…そういえば問題はなんでしたっけ? あ、CO:OFね。 はい、CO:OF=5:3。 以上!
微妙に違うパターン
粘土の重さの求め方で、頂点以外から求まるパターンもあるので、念のため説明しておきます。 難しい話ではないです。
例えばこんなパターンですね。
とりあえず、粘土の重さの比 A:C、C:F を求めてみます。
Cは、2と3になってしまいましたね。 1つの比にまとめたいので、Cを2, 3の最小公倍数である6にします。 すると、こうなります。
ここでワンポイント。 AとBの粘土の重さを足すと、Fの粘土の重さになるので、Aの粘土の重さは1とわかります。
あとはもう同じですね!